ヒラスズキ
ヒラスズキ
ヒラスズキ

ヒラスズキ 46cm

 前回の投稿のその後。
 常夜灯の灯りは朝日にかき消され、見えチヌもすっかり姿をくらませた。
 上潮だが、かなり上流の為か、川は荒れ狂う激流だ。
 アタリがあったのは、ミドルアッパーで1回。ローリングベイト77で1回。シャルダス14で、30cm程度のヒラスズキのチェイスが1回。
 この状況で最も可能性が高いルアーは、10/5の釣行からして、ミノーでのジャーキングだが、それは最終手段だ。
 水面での騒がしさが減った為、シリテンバイブ55でボトムを攻めることにした。
 しかし、数投しても反応が無く、ただ呆然と、足元で必死に泳ぐクサフグを眺めていた。
 時には生きたまま陸地に放置されたり、皮を剥がれて海に捨てられるなど、釣り人からはとつても仕打ちを受ける魚、フグ。
 私自身も、ミドルアッパーをはじめ、何十本ものワームを食いちぎられてきたが、過去に淡水フグを飼育していたことがある為、寛大な心でそれを許してきた。とても知能が高く、表情豊かで、なんとも愛くるしい魚だ。
 そんな魚に対して、その様な非人道的な行いを出来る人間がいるとは、通りすがりの人間にも、迂闊に背中を向けられないな。そんなことを考えながら、シリテンバイブ55を巻いていると、根掛かった。
 そう思ったのだが、沸き立つ様に浮上してくるのが伝わってくる。
 まずい、これはエラ洗いの前兆だ。即座にアワセを入れようと思ったが、時既に遅し。弾け飛ぶ様に宙を舞い、40cm程度のヒラスズキのエラ洗いと共に、フックアウトだ。
 5投はしていた為、このルアーには食わないと、完全に油断していた。フグなど眺めいてる場合ではなかったが、今更後悔しても遅い。こうなれば最終手段、ミノージャークだ。
 前回はタイドミノーだったが、私の目に最も美しいジャークをすると写っているミノーは、X-80 MAGNUMだ。フックも3つ付いていることから、ジャーキングでのミスバイトで外掛かりになっても、絡めとれる可能性が高い。今回はこいつでいく。
 X-80 MAGNUMでの1投目。ただ巻きを入れれば見切られると推測し、アップクロスにキャスト。着水と同時に、激流でドリフトさせながら、ジャーキングで誘う。すると、回収間際に40cm程度のヒラスズキがチェイス、そして、反転。
 完全に見切られていた。二度目は無いと思いつつも、トレースコースを変え、再度、X-80 MAGNUMを投げ込む。すると、同じ魚か、再度ヒラスズキがチェイス。しかし、ましても反転。
 私は舌打ちをしながら、X-80 MAGNUMを思い切り水面に叩きつけ、大きなため息を吐いた。
 万策尽きた。これ以上出来ることは何もない。天を仰いだ。
 そう思ったのだが、ある一つの可能性に気が付いた。それが、ジグザグベイト60Sだ。
 6/5、ナイトゲームのブローウィンジャークで初のヒラスズキをキャッチして以来、私はジャーキングに対応したルアーを買い漁った。その中で、最もヒラスズキをヒットさせることが出来たルアーこそ、このジグザグベイト60Sなのだ。
 何度もヒットさせてきたが、毎度バラしてしまい、未だにこのルアーではキャッチしたことがなかった。
 8/3の投稿に記した通り、いつしかこのルアーで釣ることに異常な執着を示し、何百何千とジャークをし続け、もはやフックサークルとは言えないほどに塗装が剥がれている。
 ここ最近はただ巻きでしか反応を得られていないが、X-80 MAGNUMよりも大幅にサイズが小さい、このジグザグベイト60Sならば、あのヒラスズキを騙し切れるのではないだろうか。
 ルアーサイズを変えたところで、ジャーキングにスレてしまったことには変わりない。それでも、淡い期待と共に、ジグザグベイト60Sを手に取った。
 カラーはもちろん、CHモヒートだ。

 ジグザグベイト60Sでの1投目。あえて先ほどのヒット地点を避けて、ダウンクロスにキャスト。ただ巻きでも十分に魚の反応を引き出せるルアーだ。まずはただ巻きで、ダウンストリームまでドリフトさせる。
 ターンして、ダウンストリームに差し掛かる。ここで、ジャーキング。
 1回、2回、3回。そして、 ヒットだ。
 ロッドが折れるのを覚悟で、全身全霊のアワセを入れる。そして巻きアワセ。横方向のポンピングと全力のゴリ巻きで、微塵も主導権は渡さない。
 しかし、激流のダウンストリームでは、否が応でも、ヒラスズキは水面に浮上してしまう。それはまるで、特大のシンキングペンシルだ。
 エラ洗いの主導権を握るや否や、これでもかとエラ合いを連発。なんとか水中に押し戻そうとロッドを水中に入れるが、この激流が、ひらすらヒラスズキを水面へと押し上げる。
 なんとかいなして落ち着かせ、エラ洗いをしない水深でヒラスズキを泳がせる。
 大きく呼吸を整える。今最も落ち着くべきは、ヒラスズキではない。私自身だ。
 絶対にバラせない。そう思えば思うほどに、手足が細かく震え出す。だが、たまらない感覚だ。これだから釣りは辞められない。
 この激流では、エラ洗いをするヒラスズキのランディングは困難だ。流れの弱い場所まで、慎重に誘導していく。
 あいにく、サイズの割に引きが弱い。樽ヒラではなさそうだ。十二分に落ち着かせ、水面へと浮かしていく。そして、その体の下へランディングネットを滑り込ませる。
 時が止まったかのような一瞬。息をするのも忘れながら、入った。今、確かに。

 ヒラスズキを引き上げるよりも前に、私は朝日に向けタックルを振りかざし、声が掠れるほどの勝ち名乗りを上げた。

 輝いている。モアザンブランジーノのエンブレムが、雨雲から透過した僅かな朝日を浴びて、黄金に輝いている。あの日の雪辱を果たし、今、本来の輝きを取り戻したのだ。
 あれほど憎んだ絶望の朝日が、まるで私を祝福するように、燦々とヒラスズキを照らしている。美しい。今ほど朝日を心地良く思ったことはない。ただただ、美しい眺めだ。
 何度も味わってきた、ジグザグベイトジャークでのバラシ。そして、先週の完全敗北。これら全てをひっくり返す、文句なしの一本。120点満点だ。
 夢にまで見た、正真正銘のデイゲームヒラスズキ。8/12の磯ヒラもデイゲームではあったが、ほぼ日が沈んでおり、完璧なデイゲームとは言い切れなかった。
 だが、今回ばかりは、紛れもない本物。シーバスアングラーの夢、デイゲームヒラスズキだ。それも、最もスレており難易度の高い、居着きの川ヒラである。
 デイゲームの居着きの川ヒラ相手に、プラグに口を使わせるが出来る釣り人など、プロのヒラスズキアングラーか、人生の全てをヒラスズキに捧げた達人のみかと思っていた。まさかそれを、この私が手にすることが出来たとは。
 もはや言葉が出ない。至高。この上ない、頂点の感情だ。

 そろそろ誕生日が近い為、自分に何かプレゼントを買おうと思ったが、どうやら、そんなものは必要なかったらしい。ヒラスズキの釣果以上に、私が望む物などありはしないからだ。
 この世に金で買えないものは少ないが、その一つが釣果だ。
 魚はどれだけ金を積もうが釣れてはくれない。狙った魚を釣るためには、膨大な時間を掛け、その魚を理解し続ける以外、他に道はない。
 年間釣行回数300日以上。これほどの時間を費やし、ようやく手にした、デイゲームヒラスズキ。

 この魚を、この感動を、そしてこの美しき朝日を、生涯忘れることはないだろう。

 

 
 
 
 
 

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釣果データ

釣れた日
2025年10月11日 06:44
魚種
シーバス > ヒラスズキ
サイズ
46.0cm
重さ
匹数
1匹
都道府県
静岡県
エリア
三保
マップの中心は釣果のポイントを示すものではありません。
ヒラスズキが釣れる近場の釣果

ヒラスズキ × 静岡県

ヒラスズキ × 三保

状況

天気
 19.0℃ 北北東 2.2m/s 1019hPa 
潮位
127.0cm
潮名
中潮
月齢
19.3
水温
水深
タナ(レンジ)

この日の釣行

日時
2025年10月11日 05:09〜06:44
05:09 釣行開始
三保で釣り開始
GOSEN
ゴーセン ルーツ pe8本編み 1号/20lb/9.1kg/ライトグリーン
06:44 釣行終了

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