みゅーたろうさんの 2025年04月16日のシーバスの釣り・釣果情報(静岡県 - 三保) - アングラーズ

シーバス 27.5cm

　中潮の満潮潮止まり前後、以前私がシーバスをバラした時と同じ潮周りだ。今日こそ間違いなく釣ってみせよう。私は絶対の自信を持って通い慣れたいつもの釣り場に向かった。
　釣り場に着くと強烈な異臭と向かい風が私を出迎えた。そして、普段は付いていなかった近隣の建物の明かりが、水面を大きく照らしている。
　水面に自分の影を落とさぬ様、屈みながら慎重に水面覗くと、かなり濁っているのが見て取れる。この真夏の亀の水槽の様な異臭の原因は、近くを流れる排水であろう。そしてそれが濁りを作ってる。
　だが、潮周り、向かい風、濁り、そして明かりと、シーバスが釣れる条件は完璧に揃っている。
　ルアーは迷いなくミドルアッパーを選択。そこにシーバスがいるのなら、間違いなく数投以内に食ってくる。そう考えただけで、強烈な緊張感に襲われ心臓が高鳴っていた。
　1投目、明暗の際を狙うも向かい風で思った場所にルアーを落とせず、いつもの速度とアクションで巻いてくるも、やはり反応が無い。
　2投目、思い通りの場所にルアーが落ちる。いれば確実に食ってくる。そう確信しながら明部の中心を通した時、それはルアーに食いついた。
　サイズはかなり小さい。このサイズの魚に強引なアワセを入れると高確率でバラシに繋がる。竿を軽く立て、いなしながら浮かせていく。かなり暴れながら何度も水面を割って出る。カマスのそれとは違う、明らかなシーバスのエラ洗いだ。アシストフックも付けている。強引にいかなければバラすことはない。焦らずランディングネットを水中に落とし込む。慎重に魚をネットに誘導し、そしてついに捕らえた。
　陸地に引き上げると、それは紛れもない、正真正銘のシーバスであった。
　その顔を見た瞬間、立っていられないほど足がすくんだ。まさに初めてブラックバスを釣った時と同じ状態だ。全身の毛が逆立つのが分かる。私は拳を強く、強く握り締め、心の中で歓喜の叫びを上げた。
　サイズはかなり小さい。だが、生涯忘れることない最高の1匹だ。たとえ今後ランカーサイズを釣ったとしても、この喜びを上まることは決してないであろう。
　そして、私が釣り上げたのを見届けていたかの様に、釣り場を照らしていた明かりが消えた。この釣り場は幻だったのか。そう思わされるほどのタイミングだ。
　手元が暗くなり、空が明るかったことに気付かされる。空は海の濁りとは裏腹に、雲一つ見当たらず、満点の星空の中にはもう、冬の大三角形は見当たらなかった。
　冬の大三角形が見え始めた頃から追い求め、そしてそれが見えなくなるほどの月日が経ったのだ。改めて、このシーバスとの戦いが、いかに長きに渡ったのかを教えてくれた。だが、その戦いにも今、終止符が打たれたのだ。

　私は初めて釣った魚は基本どれも食べてきた。だがこれほど異臭の放つ水にいた魚だ。さぞや臭くて食べれたものではないだろう。だが、すぐに逃すもの名残惜しいので、バッカンで泳がせ観察をして、私は余韻に浸りながら、明かりの消えた海にまたルアーを投げ続けた。
　しかし、その後はアタリすらなく、そろそろ帰ろうかと思いシーバスに目をやると、何度も見てきた瀕死の熱帯魚の様に、腹を上にして浮いている。仕方がないので締めて持ち帰ることにした。
　カッターを脳天に突き刺すと、背鰭が大きく開いた。その立派な背鰭には黒い斑点模様が付いている。なんと勇ましい姿か。シーバスがこれほどまでに釣り人を惹きつけるのは、そのゲーム性の高さだけでなく、なによりこの魚の見た目が見るものを魅了するからであろう。いつの日か、この魚を私の家の水槽で泳がせてみたいものだ。
　シーバスを狙おうと初めて買ったシーバスタックル。そして、何の前情報も無く、釣具屋で見かけ何気なく手にした、初めてのシーバス用ルアーのミドルアッパー。それらを駆使し、狙った状況、確信を持った一投で釣れたのが何より喜ばしい。
　今は感無量で、すぐにでも釣りに行きたいという気分にはならない。だが、次は過去に何度も苦汁を飲まされた河川とサーフで狙ってみようと思う。もうミドルアッパーに捉われる必要もない。別のルアーで、別のフィールドで、今後も私はシーバスを追い求める。

　頭、内臓、鱗を取り1日寝かせ、十分に水抜きをしてから、塩焼き、煮付けにして食べた。思いの外臭みは無く、白身魚らしい味で悪くはない。
　次はサーフで釣り、刺身で食べてみようと思う。

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