シイラ 41cm
いつもの様に、前日の20時から釣行開始。何の反応も得られず、日が上り、ついに猛烈な眠気に襲われる。体力の限界が近づいていた。
だが、このままでは帰れない。風も穏やかで、まだ潮位も足りないが、ヒラスズキの実績が高いサラシ打ちのポイントへと向かった。
現場に着くと、なんと、目を疑うほどのサラシが広がっていた。
どうやらかなりウネリがある。このウネリが、これほどまでのサラシを作ったようだ。
足元には、1mmにも満たないプランクトンの様な生物が水面を賑わせている。それを食べに、ハクやイワシ、メジナの群れが視界一杯に広がっていた。
辺り一面、青物らしき魚に追われるベイトのナブラ。見えずとも、ヒラスズキもすぐそこに居る、そう確信した。
しかし、一等地にはメジナ狙いの先行者が複数人いる。仕方なく、沖にある岩場に出来た小さなサラシを打つことにした。
相当の飛距離を要する為、シンキングペンシル、ブレードジグ、メタルジグ、ジグベッドワームで組み立てていく。
先鋒はシンキングペンシルだ。サラシの中へ、レンジを入れて、払い出しに乗せていると、ヒット。
ヒラスズキは抜き上げることを想定して、ほぼフルドラグにしていたが、強烈な引きで即座に根に潜られ、ラインブレイク。ヒラスズキのアタリではなかった。おそらく大型のタイかロックフィッシュであろう。
魚には悪いが、ルアーロストはこの際気にしない。だが、リーダーを組み直す気力が、私にはもう残っていなかった。
そこで、エアリティの忘形見、予備の4000番スプールを取り出した。PE1号にリーダー17.5lb。小型プラグを使うリバーシーバス用のラインだ。強いてメリットを上げるなら、やはり飛距離はやや伸ばせることか。
磯ヒラのプロの中には、PE0.8号を使う猛者もいるが、今の私には、この細いラインを切られずに魚を獲れるほどの技量を持ち合わせていない。だが、もうこれしかない。もし魚を掛けても、抜き上げるだけの強度はないので、ランディングネットを使うことになるだろう。
次はメタルジグで探っていくが、反応が無い。ジグヘッドワームでは狙ったサラシまで届かず、最後の切り札を使う時が来た。
私が唯一、キャッチすることが出来た磯ヒラに口を使わせたルアー、シャルダス14。表層を引けることから根掛りの回避性能が高く、飛距離も出るが、やはりプラグではあのサラシまで届かない。
そこで、プラグのシャルダスでははなく、メタルジグにブレードを搭載した、メタルシャルダス35gを手に取った。
メタルシャルダスでの1投目。サラシの濃さを十分に見てキャスト。着水と同時に、払い出しに乗せて巻いていく。
すると、一度味わえば忘れない、あの硬質的なアタリ。ヒラスズキだ。やはり居た。だが、乗らなかった。
サラシを出る。追い食いも無い。針に触れた以上、もう食ってはこない。一度きりのチャンスを、ものに出来なかった。
サラシを出てからは、回収の為早巻きをしていたが、先ほど根に潜られた魚がもう一度食ってこないかと、ベールを開きフリーフォールさせた。
カウントダウン、3秒経過。すると、横から何かが突っ込んだ。
かなりの初速で引く。ヒラスズキではないが、先ほど根に潜られた魚でもない。当然ドラグは出されないが、なんとか抑え込む。
そして次の瞬間、水面から飛び出し、宙を舞った。シイラだ。
ヒラスズキ一択で無視していたが、辺り一面で永遠と続いているナブラの原因は、こいつらだったのか。
ハイピッチに首を振るシーバスのエラ洗いに比べれば怖くはないが、サワラを彷彿させるそのジャンプは、やはり釣り人の心を昂らせる。
1度目のジャンプは凌ぎ、その後は主導権を渡さぬように、全力のゴリ巻きで寄せていく。
遠目から見てもそこまで小さくはなかった。だが、全く引かない。バラしたのか。手を止めようかと思ったが、こちらに走っている可能性もある。万が一ついていれば、またジャンプや、根に巻かれるリスクが高い。
引きも重量も伝わらない不安の中、セルテートの巻き上げ能力を駆使して、一気に寄せる。
すると、エメラルドグリーンの美しい魚が、足元の水面に姿を現した。
最後の抵抗で、下か横に走ると身構えたが、されるがまま、全く引かない。メタルシャルダスは、確かにしっかりと口に掛かっている。スレ掛かりでもないのに、なぜここまで大人しいのか。
PE1号で抜き上げるには不安だ。仮にまだ走るのなら、バラシ覚悟で抜き上げるが、ここまで行儀の良い魚なら、ランディングネットを見せても、また走り出すようなことはしないはずだ。
水面に浮かせるとようやく暴れ始めたが、走ることはせず、その人が絵の具で塗ったかの様な美しい体色の体を、ネットの中へと沈めていった。
私が普段お世話になっている美容院の担当者は、身内に遊漁船の船長がいるとのことで、施術中の談笑で、多くの釣りに関する情報を提供してくれる。
その船長曰く、シイラとソウダガツオは、不味すぎて喉が通らない。あれを食べるのは余程の物好きだ。とのことだ。
そのことを思い出し、リリースすることにした。
普段ならすぐさま引き上げる私だが、この手の魚はすぐに弱る。海に浸けたままランディングネットの中で休ませて、その隙に、メジャーを濡らす。
ルアーがそう簡単に外れそうにない為、そのままサイズを測り、写真を数枚撮った。ランディングネットを使ったことにより、せっかくの美しい魚体に細かい傷が付いてしまっている。
すぐに逃そうと思ったが、フロントフックのカエシが喉奥に引っかかり、これがなかなか外れない。
かなり手間取ったが、ようやく外れ、ランディングネットで蘇生をさせたが、既にあの美しい体色はくすみ、腹を上にして苦しそうにエラを動かしている。
これはもう助からない。責任をとって持ち帰ることにした。
その後も、その小さなサラシを打ち続けたが、やはりなんの反応も得られなかった。
潮止まりで海が落ち着いたのを頃合いに、あの見事な体色が見る影も無くなった真っ白のシイラを持ち、灼熱の海辺を後にした。
私が小学生の頃、旅行先の東南アジアの離島で、父が1人でダイビングをした時に、大型のシイラと遭遇し写真に収めたと、誇らしげに語っていた。
その写真に写っていたシイラは、豆粒の様に小さく、よくこんなもので堂々とシイラなどと言えるなと、当時の私は思った。
海外であったことから、長らくシイラは南国にしかいない魚だと思っていた。
しかし、数年前に静岡に越してきて、釣具屋に行った際、シイラのタックル紹介の看板を見た時は実に驚いた。沖縄ならまだしも、ここ静岡でシイラが釣れるのか。
だが、選ばれし者にしか釣れないのであうろ。そう思っていた。ここ数ヶ月の釣果を見るまでは。
連日上がり続けるシイラの釣果。シイラのフィギュアを買って貰ったほど憧れた魚が、まるで入れ食いのアジのように、延々と釣れ続けている。
1mを越すようなシイラならまだしも、皆が容易く釣っている小型のシイラなど釣りたくはない。そう思っていた。
今回は狙って「釣った」わけではなく、「釣れた」というのが正しい。
再現性のない釣りで釣れてしまった魚は実力でなく、ただ運が良かっただけのことだ。決して誇れる事ではないが、実際釣れると、やはり嬉しいものだ。
一点、期待外れだったことは、やはりその引きの弱さだ。
弱いというより、ヒット直後以降は全く引かなかった。私のタックルがこのサイズの魚に対して強過ぎたのかもしれないが、青物ならもう少しスリリングなファイトを期待していた。
それを生業とする漁師が、とてつもなく不味いというのだから、やはり美味しくはないのだろうが、実際に食べてみるまでは分からない。
ヒラスズキが最高の味だと言い張る私なら、シイラすらも、美味しと思ってしまうのでないろだろうか。
もっとも、ヒラスズキの味は、誰がなんと言おうと、間違いなく格別だ。
確信持って放った一投に食い付き、サラシの中から飛び出すあのヒラスズキのエラ洗い。
休日の日中という限られた時間にしか狙えず、いくつもの条件が完璧に揃わなければ、竿を出すことすら許されない、磯ヒラのサラシ打ち。
磯ヒラが釣りたい。あの光輝く白金の魚を。シーバス狙いで釣れた川ヒラではなく、磯ヒラをだ。
明日こそは、釣れてくれるだろうか。まずは、条件が揃ってくれることを祈るのみだ。
1日寝かせ、十分に水気を取ってから頂いた。
三枚おろしにした時点で、かなりきつい臭いを放っている。
刺身を一切れつまみ食いしたが、噂通り、これは食べれたものではなかった。
焼いてもそこまで変わらないかと思ったが、塩焼き、煮付けにして食べてみると、こちらは全く問題なかった。
素直に美味しいと言っていい味だ。だが、また食べたいかと言われると、そこまでの味ではないというのが正直なところだ。
釣果データ
マップの中心は釣果のポイントを示すものではありません。タックル
- ロッド
- リール
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DAIWA
- 24セルテート LT4000-CXH
- 47,054円~
- 6293 釣果
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DAIWA
- ライン
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GOSEN
- ルーツ pe8本編み 1.5号/30.0lb
- 1,425円~
- 442 釣果
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GOSEN
状況
- 天気
- 25.0℃ 北北西 1.7m/s 1015hPa
- 潮位
- 123.7cm
- 潮名
- 小潮
- 月齢
- 6.9
- 水温
- 水深
- タナ(レンジ)
この日の釣行
- 日時
- 2025年08月30日 08:19〜08:19
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- 08:19 釣行開始
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- 三保で釣り開始
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GOSEN
ゴーセン ルーツ pe8本編み 1.5号/30lb 1.5号/30lb(14kg) -
- 08:19 釣行終了
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