みなさんこんにちは!とある水族館で飼育員をしているかつ兄です。
先日、ライター仲間との会話のなかで
「魚の捕食をよく見られてる方がその知識を釣りに活かしているのであればどうされているのか、ということに興味がある。ぜひ記事にして欲しい」
という話を聞きました。
あーなるほど、Twitterなど調べてみるとその話題について気になっている方って結構いるみたいですね。
確かに思い返してみれば、釣りが飼育をしていく上で活きたことはありますし、飼育をしていく上で知らず知らずのうちに釣りに応用していたことは結構あります。
いつも仕事目線で魚と関わっているので、僕としてはその質問に対して目からウロコでした(魚だけに…)
この話題、マガジンのネタとして頂きます!笑
読み切りにしようかと思ったんですが書き始めて意外とボリューミーになってきたので何回かに分けさせて頂きます…
※各方面への配慮の為、画像は勤務先ではなく、これまで訪れた水族館のものとなっております。ちなみにどこの水族館の水槽かわかった方!なかなかの水族館通です笑
飼育の知識が釣りに活きたこと
さて、何から書いたらいいのか…
ありすぎて悩みますが、まずは釣りに直結する「餌やり」について書いていきます。
釣りは基本「針が付いた餌を魚に食べさせて釣る」なので釣りにおいて餌やりは、1番気になる話題であり、重要な事かと思います。
食わない魚に対してどうやって口を使わせるかっていうのは、釣り人が直面する永遠の課題ではないでしょうか?
飼育するうえで餌を食べない生き物にどうやって餌を与えるとよいか??
どこの飼育員の方も1度は経験する課題なのではないかな?と勝手に思っていますが…
飼育員の方で読まれている方は少ないかと思いますが、少しでも読んでいる皆様のヒントになれば嬉しいです。
水族館の仕事の話もせっかくの機会なので少し織り交ぜながらお話しさせて頂ければなと思います…。
実は魚よりもイルカの方が好き。大学の卒業論文はイルカの食性について。前の水族館ではイルカトレーナーでした。魚ちゃうんかいwww
飼育小話
さて皆さん、水族館の魚ってどこから来るか知ってますか?
海や川など自然から採集してきたり、繁殖させたり、水族館専門の卸業者さんから購入、他の水族館から譲って貰うor生き物の交換などなど…
結構色々なルートからお魚を入手してます。
ちなみに僕が働いている水族館は動物愛護の観点から「自然から命を無闇に採集してはならない」というルールがあるので、アニマルウェルフェアに沿ったルートでお魚達を水槽へお迎えさせてもらってます。
一応、業者さんや水族館で餌を食べ、寄生虫を駆除し、病気や調子の悪くない子達が搬入されてくるのですが、長距離の移動だったり、初めての環境へのストレスからだったりなのか餌を食べてくれない魚も出てきます。
いきなりそういった子達を水槽に入れると、水槽の隅に隠れて目が届かなくなったり、こちらの水質に合わなくて死んでしまうことが稀にあります。
そして、ある程度の日数を隔離水槽でゆっくりと環境に慣れてもらい、晴れてみなさんが見ることができる水槽へデビューします(これを「検疫」と言います)。
水質は事前に共有があるのでこちらが受け入れる際に専用の水槽を立ち上げて準備をしています。
しかし問題は餌…
前述したように餌をなかなか食べてくれない子がいるんです(特にサメや大きい魚に限って食べないんです…)
しかも餌にも命があるので愛護の観点から生き餌は原則使用禁止…。
なのでちゃんと餌を食べてくれるようになるまで、ある意味めっちゃハードモードの餌釣りです。笑
飼育の小技①餌選び
さて、いかに魚達に餌を食べてもらうかですが、まずは前提としてその魚の食性について調べる事が大切です。
みなさんも釣り雑誌やインターネットなどで釣りたい魚の生態を調べたりした経験はあるのではないでしょうか?
アジが好きだったりイワシが好きだったり、イカやアサリ、エビだったり好みは様々です。種類によってはそれしか食べないなんて子も…
同じ魚種でもいた場所や性格で好みが全く違ったりもします。
ちなみに好きな餌ばかりあげると栄養が偏るので、食いが悪い餌も食べさせなければいけません。
一口サイズに切ったアサリやイカ、オキアミです。奥には冷凍庫から出したばかりのカチカチの魚が見えます。
「餌を食べてくれないって言うけど、お腹が空けばそのうち食べてくれるでしょ?」って思うじゃないですか?
マジで食べない子は食うか餓死かのレベルで頑なに食べてくれません…汗
そういった子は自分の持つ技術と知識をフルに使って餌を食べてくれるまで根気よく付き合います。
そして「食べてくれない子にどうやって食べてもらうか」が最大の難所です。
飼育の小技②どう食わす?
さてここから飼育員の腕の見せ所!
自分で言うのもなんですが、食べなくなってしまった魚に再び餌を食べさせることに関して、うちの水族館では僕の右に出る人はいないと思います。
一度冷凍され、解凍した餌をいかに「自然環境で食べている餌に近づけて、魚の食欲を立たせるか」が一番の課題です。
自然界で生きた餌を食べている種類はこのような死んだ餌を、人の手から食べてくれるようになるまで少し時間がかかります。
例えば泳ぎ回っている回遊性のサメだと、餌から出る血汁を少し撒いて匂いを出し、餌やり用の棒に魚を付けて鼻先の近くで魚を泳がせます。
食べないようなら弱った魚を演出したり、ピクピクさせて瀕死の魚みたいにしたりとイレギュラーな動きをつけてみたり、水面で音を立てると急にスイッチが入って食べるようになることもあります。
また棒を怖がる様な反応がある時は、泳いでくる軌道を読み、タイミングを見て流れが強い場所(水流ポンプや吐出付近)へ魚を投げ込みます。
そうすると餌の魚が水流に揉まれて平打ちなどのイレギュラーアクションになり食べる事もあります。 (リアクションバイト?)
釣りへの応用
では以上のことを踏まえて釣りに応用していきます。
まずは何を食べているか、についてですが何通りかの調べる方法があります。
大きなフィッシュイーターの場合、今その海域でベイトになる魚が釣れているか、採れているかを調べます。
アングラーズの釣果を調べればイワシ、アジ、サッパなどの餌になる魚がいれば、それに合わせたルアーを用意していきます。
また同様に釣れた魚が吐いたベイトや持ち帰った魚のお腹を捌いて胃の中を調べます。(胃内容物調査)
ブリのお腹から出てきたベイト
カタクチイワシとサッパがたくさん出てきました。これを元に次の釣行のメインとなるルアー(パイロットルアー)は10cm前後のシルバー系のルアーに決定していきます。
次にルアーアクションについて
鳥山が出来たりボコボコに釣れてる時はいいですが、何をしても釣れずシーンとした時は、誰しも経験あるのでは無いでしょうか?
そんな時はルアーにイレギュラーアクションを加えていきます。
水流に揉まれて…と前述しましたがルアーアクションに応用です。
スローピッチでリーリングから急に早巻きにして「逃げられちゃう!」と思わせて口を使わせたり、逆に早巻きからストップして「チャンス!食べちゃえ」と バイトを誘います。
さいごに
とってもざっくりな感じで書いてきましたが伝わりましたか…?
総論になるかわからないですが、僕が意識してることと言えば
「魚の気持ちになって考える」
これです。あたりまえですが、これって飼育者として大事な事だと思いますし、釣りにも応用が効くと思います。
分かりずらいですかね…?
例えば、皆さんは夕飯何食べようかな〜、という時にどんな心理になりますでしょう?
行列のできる店は多分美味しいから行ってみる、小腹が空いたし手元に美味しそうなポテチあるからとりあえず…みたいに空腹を満たす事があると思います。
魚も泳いでる時に美味しそうな魚いれば食べちゃおうかなってなるかもしれませんし、鳥山やベイトボールみたいな行列(?)が出来てたらどんどん集まってきて夕飯のバーゲンセールになってるいるのではないか、とも考えられます。
「自分が魚だったら」って考えたら「1匹」までの糸口が見えてくるように思います。
どうでしょう?
水族館って魚の気持ちを考えて、釣りに活かすのにうってつけの場所じゃないですか?
どこかの水族館でお待ちしてますね笑
この記事が読んでいただいた方のヒントになり、目の前の1匹を釣り上げるきっかけになれば幸いです。
次号は魚のいる場所についてお話出来ればなと考えています!
ではまた!
とある水族館で飼育員をしているかつ兄です。
釣りは4歳から始め魚好きが高じて飼育員になりました。
休みやちょっとした時間があればだいたい水辺にいる典型的な釣りバカです。
基本ルアーがメインでジギング、キャスティング、エギングをよくやります。